香りの散歩道


時雨忌


墨絵・朝野泰昌
旧暦の今日10月12日は「芭蕉忌(ばしょうき)」。
世界にその名を知られる俳人・松尾芭蕉が、この世を旅立った日です。

  「芭蕉忌」は「時雨忌(しぐれき)」とも呼ばれます。

時雨とは、秋から冬にかけて、通り雨のように降ったり止んだりする雨のこと。
旧暦の10月が時雨月(しぐれづき)と呼ばれることや、芭蕉が時雨という季語を好んで使ったことが、「時雨忌」の由来だといわれています


初時雨(はつしぐれ)猿も小蓑(こみの)を欲しげ也(なり)

今年初めての時雨に降られ、雨よけの蓑をまとったが、山の猿たちも小さな蓑を欲しがっているようだ・・・。
ふるさとの伊賀に帰る途中、山の中で時雨に遭って詠んだといわれる、芭蕉の代表作の一つです。

その2年前、俳諧の旅で江戸を立つときに詠んだとされる句にも、初時雨の名句があります。

旅人と我が名呼ばれん初時雨

これから自分は、旅人と呼ばれて行こう・・・。
この句の初時雨には、旅にあっては空も我が身も定めなきもの、という意味が込められているのでしょう。

雨の匂い、風の音、五・七・五の十七文字で森羅万象を詠みあげた、松尾芭蕉に敬意を表して・・・。

「時雨忌」の今日、400年の時を超えて、私たちの心を揺すぶる句の数々を味わってみませんか。



*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。



*このコーナーは毎週水曜日に日本海新聞で掲載しています



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